ログイン暗い水路を進み続けた先に、かすかに外の光が差し込んでいる場所があった。
セリスは慎重に足を進め、壁際に手を当てる。苔が生い茂り、湿気が強いが、確かにそこには人工的な扉が存在していた。「……ここが出口?」
カイが周囲を見回しながら言う。
「いや……これはただの扉じゃない。封印されている」
ミアがじっと扉を見つめ、杖をかざした。
扉には微細な魔力の流れがあり、それがまるで鍵のように扉を固定している。「どうにかできるか?」
ライルが問うと、ミアは小さく息をついて頷いた。
「大丈夫。でも、少し時間が必要よ。解除には慎重に魔力を扱わないと……」
「なら、その間、俺たちが警戒にあたる」
セリスは剣を握り直し、後方を見据える。
帝国の追手がいつ現れてもおかしく@ 地下水路の出口 暗い水路を進み続けた先に、かすかに外の光が差し込んでいる場所があった。 セリスは慎重に足を進め、壁際に手を当てる。苔が生い茂り、湿気が強いが、確かにそこには人工的な扉が存在していた。「……ここが出口?」 カイが周囲を見回しながら言う。「いや……これはただの扉じゃない。封印されている」 ミアがじっと扉を見つめ、杖をかざした。 扉には微細な魔力の流れがあり、それがまるで鍵のように扉を固定している。「どうにかできるか?」 ライルが問うと、ミアは小さく息をついて頷いた。「大丈夫。でも、少し時間が必要よ。解除には慎重に魔力を扱わないと……」「なら、その間、俺たちが警戒にあたる」 セリスは剣を握り直し、後方を見据える。 帝国の追手がいつ現れてもおかしくない。「ふぅ……よし、始めるわ」 ミアは杖を扉に向け、静かに呪文を唱え始めた。 ——「セント・ディスパージョン」 淡い光が杖の先から扉へと流れ込み、封印の魔力を少しずつ解きほぐしていく。 すると、扉の表面に浮かび上がる古い文字。「……これは、王家の紋章?」 セリスは思わず声を上げた。 確かに、その紋章はエルセリア王家のものだった。「この扉……もしかして、王族のために作られたもの?」「だとすれば、セリスが触れれば開く可能性があるな」 ライルの言葉に、セリスは静かに手を伸ばした。 指先が扉に触れると、途端に光が揺らめき—— カチリ。 封印が完全に解かれた音が響く。「やった! 開いたわ!」 ミアが喜びの声を上げると、
@ 交易都市の激闘 狭い路地裏に鋭い剣戟の音が響き渡る。 ライルは先頭に立ち、帝国兵の剣を弾き返した。その反動で生まれた隙を突き、セリスが踏み込む。「はっ!」 素早い剣の一閃が帝国兵の腕をかすめ、相手は苦悶の声を上げた。しかし、すぐに別の兵士が彼女の側面に回り込み、攻撃を仕掛けてくる。「甘いな」 その一撃は、横から割り込んだカイの短剣によって阻まれた。彼はにやりと笑い、相手の剣を巧みに絡め取ると、逆手に取った短剣で兵士の足元を払った。「っと、倒れてもらおうか!」 兵士は無様に転倒し、ミアの魔法がその体を縛りつける。「動かないでよ。じっとしてれば痛い目に遭わずに済むんだから」 ミアの指先が紫色に輝き、さらにもう一人の兵士の足元に幻影を走らせる。その兵士は錯覚にとらわれ、一瞬の隙を見せた。そこへライルが剣を叩きつけ、完全に戦闘不能にする。「……なるほど、なかなかやるじゃないか」 フードの男——エーリヒは、興味深そうに目を細めた。「だが、そろそろ潮時じゃないかな?」 そう言って彼が懐から小さな水晶を取り出す。すると、空間がわずかに歪み、帝国兵の増援が姿を現した。「転移魔法……!」 セリスは歯を食いしばる。先ほど倒した兵士たちの穴を埋めるように、新たな兵士たちが周囲を取り囲んでいた。「さあ、どうする? そろそろ逃げ道はなくなってきたぞ?」 エーリヒの声には余裕がある。しかし、セリスたちの目に諦めの色はなかった。「カイ、隠し通路は?」 ライルが短く問う。「へへっ、ちゃんと確保してるぜ」 カイが不敵に笑い、足元の石畳を軽く蹴る。その瞬間、カタリと鈍い音を立てて、地面に小さな穴が開いた。「ここから地下水路に抜けられる。ただし——」「ごちゃごちゃ言ってる暇はない! 早く行くわよ!」 ミアが言葉を遮りながら、先に飛び込んだ。
@ オルディア連邦・交易都市 – 隠者の研究室 セリスたちはジークに案内され、酒場の奥にある重厚な扉の前に立っていた。ジークがノックすると、中から低くくぐもった声が響いた。「……誰だ?」「客だよ。お前の興味を引く話を持ってきた」 ジークが扉に寄りかかりながら答えると、しばらくの沈黙の後、ギィ…と重い音を立てて扉が開かれた。 部屋の中は、壁一面に本が詰まった書棚が並び、天井からは古びた魔道具が吊るされている。机の上には無数の巻物と錬金術の器具が置かれ、どこかの遺跡から持ち帰ったと思われる石版も見える。「ふん……珍しい客だな」 部屋の奥に座るのは、白髪混じりの長い髭を蓄えた男だった。深い皺が刻まれた顔には鋭い眼光が宿り、ただの学者ではないことが窺える。「名を名乗れ」 セリスは一歩前に出て、真剣なまなざしで答えた。「セリス・……ただの旅人ではありません。『聖なる泉』について知りたいのです」 男は彼女をじっと見つめ、そして小さく鼻を鳴らした。「セリス、か。その銀の髪……どこかで見たような気もするが……まあいい」 彼は立ち上がり、書棚の一角から古びた巻物を取り出した。それを机の上に広げ、指でなぞるようにして言った。「『聖なる泉』……それは古代より伝わる聖地であり、ただの水源ではない。この泉は、過去と現在を繋ぐ力を持つ」「過去と現在を……?」 セリスの胸が高鳴る。まるで、彼女の『記憶の継承』と通じる何かを示唆しているかのようだった。 男は巻物を指で軽く叩きながら続ける。「だが、この泉へ至るには鍵がいる。そして、その鍵は一つではない。三つの封印があり、それぞれが異なる場所に隠されている」「三つの封印…
@ オルディア連邦へ ゼルヴァニア王国の国境を離れ、セリスたちは南へと進んでいた。 目指すはオルディア連邦。交易が盛んな自由都市であり、魔術の研究も盛んに行われている場所だ。「オルディアに行けば、魔法に関する手がかりが手に入るかもしれない」 ミアの言葉を受け、セリスは小さく頷く。「記憶の継承……それをより深く理解するためにも、もっと知識が必要よね」 ライルは警戒するように周囲を見渡した。「帝国の追手がまだ近くにいる可能性もある。道中、気を抜くな」 カイが軽く笑いながら肩をすくめる。「心配性だな、ライル。ま、俺も油断はしねぇけどな」 レオンは静かに歩を進めながら言った。「オルディアには獣人の住む地区もある。俺の知り合いがいるかもしれない。情報を集めるなら、そっちにも顔を出してみるといい」 セリスは彼の言葉を聞きながら、心の中で考えを巡らせる。 (記憶の謎、帝国の動向、獣人たちの盟約……まだ知らないことが多すぎる) 彼女の瞳に、強い決意が宿る。 *** オルディア連邦・交易都市 長い旅路の果てに、ようやくオルディア連邦の交易都市が見えてきた。夕暮れの光に照らされた街は活気に満ち、行き交う商人たちの声が賑やかに響いている。各地の品々が並ぶ市場、異国の言葉が飛び交う酒場、そして独自の魔術研究が進められている学舎。帝国の支配が及ばないこの地では、自由と混沌が入り交じっていた。「すげぇな……ここまで色んな奴らが集まってる街は初めてかも」 レオンが感嘆の声を漏らしながら周囲を見渡す。獣人、エルフ、商人、冒険者、そして黒ずくめの何かを企む者たち——さまざまな人種が混在し、この都市の独特な雰囲気を形作っていた。「とにかく、まずは宿を確保しよう。情報収集をするにしても、拠点が必要だ」 ライルが冷静に提案し、セリスた
@ ゼルヴァニアの戦士 影の魔術師の表情にわずかな動揺が走る。「……獣人か」 影が蠢き、警戒するように後退する。 レオン・フェルガードはその場に堂々と立ち、獣のような鋭い目で魔術師を睨みつけた。彼の銀灰色の毛並みが月光に照らされ、漆黒の影と対照的に輝いている。「ゼルヴァニアを守る者として、この地で好き勝手はさせん」 低く響く声とともに、彼は大剣を構える。その動きには迷いがなかった。「ほう……獣人風情が、私の影に立ち向かうつもりか?」 影の魔術師が嘲るように笑うと、再び影の鎖を伸ばし、レオンを絡め取ろうとする。 だが——「遅い」 レオンの足が地を蹴り、次の瞬間には影の間をすり抜け、魔術師の目前に迫っていた。「なに……!?」「——遅すぎる!」 レオンの大剣が唸りを上げ、影を切り裂く。闇が弾け、魔術師の身体が衝撃で弾き飛ばされた。「ぐっ……!」 影の魔術師は地面を転がりながら立て直すが、レオンの猛攻は止まらない。「セリス!」 レオンが叫ぶ。「影の核を探れ! 俺が時間を稼ぐ!」 セリスはすぐに状況を理解し、目を閉じる。そして、王の血が持つ能力——記憶の継承を使い、影の流れを探った。 (どこかに……必ず……) その時—— 彼女の脳裏に、一瞬の光景が閃いた。 ——影の中心、魔術師の左手の奥に、小さな核が脈打つように存在している——「見つけた……!」 セリスは目を見開き、ライルとミアに向
ゼルヴァニア国境付近——帝国軍の奇襲 @現れた帝国の刺客「セリス・エルセリア……生きていたとはな」 男の低い声が森の静寂を切り裂く。 セリスは息をのんだ。彼の口ぶりから察するに、単なる帝国の兵士ではない。だが、どこかで見た記憶はない。「……お前は誰?」 問いかけるセリスに、男は薄く笑った。「名乗る必要はないさ。どうせ、お前たちはここで死ぬ運命なのだからな」 次の瞬間、男の手にある短剣が鈍く光を放つ——そして、まるで影が生き物のようにうごめき始めた。「っ……!」 ミアが即座に魔力を高める。カイも身構え、ライルは剣を握りしめる。「影の魔法……!」ミアが低く呟いた。「こいつ、ただの兵士じゃない……帝国の特殊部隊かも!」 影がまるで獣のような形を取り、男の周囲を漂い始める。普通の魔法とは明らかに違う、不吉な気配が辺りを包む。「さて、準備はいいか?」男は静かに言い放つと、影が突然飛びかかった。「来る!」ライルが叫ぶ。 戦闘が始まった。 男の影が蛇のように伸び、セリスたちを襲う。ライルが大剣で叩き払おうとするが、影は実体を持たず、まるで霧のようにかわしていく。「物理攻撃が効かない……!?」ライルが歯ぎしりする。「私に任せて!」ミアが杖を掲げ、光の魔法を発動させる。「《ルーメン・フラッシュ!》」 閃光が闇を貫き、影が一瞬消し飛ぶ。しかし、男は動じることなく短剣を振るい、新たな影を生み出した。「小賢しいな」 その影がミアへ向かって放たれる——「させるかよ!」 カイが素早くミアを押しのけ、短剣を投げる。しかし、影は短剣をすり抜け、さらに形を変